西ノ谷遺跡出土遺物の金属学的解析

はじめに

横浜市港北ニュータウン南端部に位置する西ノ谷遺跡は、古代末期~中世初期の鍛冶遺構に伴い約230kgの遺物が出土しました。鉄関連遺物としては、小札、鏃(やじり)などの鉄製品と鉄塊、羽口片などが出土しました。

ここでは、これらの金属学的解析を行った一部を紹介します。

註:この調査結果は、横浜市「兵物語」に報告されたものです。

鉄塊系遺物調査結果

大きさはこぶし大で重量感があり、表面は茶褐色および紫色を呈し、所々に小さなひび割れが観察されます。化学成分からは、コバルト(Co)がやや高めであるほかに、炭素(C)、燐(P)ともに高く、明らかに銑鉄塊といえます。

断面マクロ・ミクロ組織観察結果は下の写真に示します。

内部の金属鉄中には、0.数mmから数mmの丸みをおびた空孔が存在します。これらは、鉄塊が半溶融状態におかれた時に発生したガスが塊中に閉じ込められたためと推測されます。

塊の周辺は炭素量の低い領域(鋼)と、中央部が炭素量の多い領域(銑鉄に近い)との複合組織からなっていることが判明しました。

介在物は、中央部がウスタイトとガラス質珪酸塩を主体とするチタン分の低い介在物、また周辺部にはファイヤライトとチタン化合物を主体とする介在物が存在することが判明しました。

  • 鉄塊系遺物調査結果1
  • 鉄塊系遺物調査結果2

鉄製品:鏃

表層は若干錆化の進んでいるものの、内部は健全な金属組織を示します。

介在物中にやや大きな結晶のチタン化合物の存在が認めらます(下のEPMA分析結果)。

  • 鏃1
  • 鏃2

まとめ

製品・鉄塊系遺物にはいずれもチタン化合物が認められたことから、当遺跡では、銑鉄塊を鉄原料とし、鋼精錬作業を経て小札、鏃等の武具、さらにはそれにとどまらず農具等も一貫製作されていた可能性が極めて高いことが判明しました。

しかし、当遺跡ならびに近くには、この時期(古代末~中世初期)に製鉄を推測させる遺構がないことから、銑鉄の素材は外部から搬入されたと考えられます。

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